昨今の人手不足や採用手法の多様化に伴い、企業の採用コストは増え続けています。国内では「人手不足倒産」件数も増加の一途を辿っており、都市部であっても例外ではありません。
そのため企業の人事担当者は、極力採用コストをかけずに慎重に候補者を見極めたり、新しい採用手法を取り入れたりなど創意工夫を続けています。
とはいっても、優秀な人材ほど市場の需要は高く、多くの企業が自社を選んでもらおうと熱心にアプローチしています。つまり、一人の候補者には同時に検討中の企業が複数あり、自社は常に比較検討の対象であるといえるでしょう。
このような求職者優位の時代において、採用コストを削減しつつ、優秀な人材を獲得するためには、どうすれば良いのでしょうか。今回は採用コストを削減する具体的な方法を8つご紹介します。
採用コストを削減する方法1:採用ターゲットを明確にする
優秀な人材を採用するためには、どんな人に来て欲しいかターゲットを明確にすることが大切です。年齢、仕事観、趣味、思考など、具体的な人物像(ペルソナ)を想像することで、その人物に対するアプローチ方法が明確になります。
色々な人に応募してもらいたいからといって、曖昧で不明瞭なターゲット設定は誰からも見向きされません。求職者があなたの会社の求人を見つけたときに「自分が求めていた求人だ」と感じてもらうことが、優秀な人材を集める本質です。
採用コストを削減する方法2:職務内容を詳細に書く
求人情報には、業務・仕事内容、権限や責任の範囲、必要なスキルなどを詳細に記載します。こうした職務記述書は「ジョブ・ディスクリプション(job description)」と呼ばれ、やるべきこと・やらないことを具体的に記載することで、採用後のミスマッチを防ぎます。
職務内容を曖昧に記述し、やるべき業務の一部を隠して求人を掲載しても、応募は集まるかもしれませんが、選考途中で辞退されたり、入社後ミスマッチで早期離職につながったりします。
一見ネガティブな情報も正直に記載し、なぜその業務が必要なのかを明確に伝えた方が企業としての誠実さが伝わります。結果として、覚悟を持って応募してくれる人材が増えるでしょう。
採用コストを削減する方法3:社内で採用意志の確認を取る
優秀な人材を採用するためには、いかにタイミングとチャンスを掴むかが重要です。なぜなら求職者は常に他社と比較検討をしながら、転職活動を行っているためです。
内定通知を躊躇してしまえば、タイミングを逃し、求職者側から選考辞退される可能性が高まるでしょう。
チャンスを掴むためにも、経営陣に採用意志を確認し、給与範囲の承認を受けたら、すみやかに求職者に内定通知を行い、承諾書を取り交わしましょう。
せっかく最適な候補者を見つけたにもかかわらず、社内で最終決定が下りず、みすみす候補者に選考辞退されるという事態は避けたいものです。
採用コストを削減する方法4:ゴールから逆算してスケジュールを設定する
いつまでに、何人必要か採用ゴールを設定したら、逆算して採用スケジュールを設定します。面接回数や担当者のスケジュール確保も含めて計画を立て、あらかじめ関係者に日程を調整してもらいましょう。
前提として、選考プロセスはなるべく短期間に抑えるべきです。長期間に及ぶほど、求職者のモチベーション維持が難しくなり、選考辞退の可能性が高まります。
また、候補者に対して面接日程のリスケを打診したり、面接時間に遅れて参加してしまったりすると、企業側のイメージが低下し、選考辞退の可能性が高まります。企業側が選考する立場であるとはいえ、応募者を大切なクライアントと同じように誠意を持って対応することが大切です。
採用コストを削減する方法5:客観的・現実的に採用できるか見極める
職務内容と給与・待遇などの勤務条件が見合っているかどうかを客観的・現実的に見極めましょう。理想的な候補者を設定しても、実際にそのような人物が実在しなければ、いつまでも採用に至らないでしょう。
仮に候補者がいるとしても、同業他社と比較して、自社が選ばれるだけの魅力的な待遇を提供しているかを客観的に判断することも必要です。自社の給与や待遇が市場の相場と比べてどうなのかを判断する際に有効になるのが、人材紹介会社からのアドバイスです。人材紹介会社は同業界の競合を含めた類似のポジションを多数取り扱っているため、他社と比べた自社の給与・待遇に対する率直な評価を聞いてみると良いでしょう。
もし他社と比べて、自社に優位性が見当たらない場合は、条件・待遇を見直すか、採用基準を下げることも検討しましょう。
採用コストを削減する方法6:推薦状を確認する
推薦状(Reference letter)とは、応募者の前職の同僚や上司、またはクライアント企業の担当者・経営者など、実際に応募者の仕事ぶりを知っている人から、応募者のスキル、実績、特徴などを具体的に書いてもらうものです。
欧米では推薦状の確認は当たり前となっており、日本でも外資系を中心に導入する企業が増えています。推薦状を確認することで、応募者自身がまとめた履歴書や職務経歴書の内容や、面接時の印象と相違がないか確認できます。採用後のミスマッチを防ぐためにも、推薦状の提出を求めることも検討しましょう。
採用コストを削減する方法7:候補者に選考スケジュールを伝える
候補者には、選考の流れや合否連絡をいつまでに知らせるか明確に伝え、その期日を必ず守るように徹底しましょう。候補者がいつ連絡をもらえるか把握していないまま期間を空けてしまうと、「放っておかれているのではないか。」と感じるものです。その結果、連絡したときには「他の企業から先に内定をもらったので、そちらで決めてしまった。」と、すでに他社への就職を決めてしまっている可能性があります。
また、約束した期日を過ぎても連絡しなければ、不誠実な会社と思われ、選考辞退に繋がる可能性があります。社内での検討に時間がかかっている場合は、せめて進捗状況を伝えるなど、誠実さを伝えるようにしましょう。
採用コストを削減する方法8:スピーディに進める
近年はインターネットサービスの普及に伴い、採用活動もビジネス同様にスピード対応が求められます。応募してくれた候補者に対して、連絡をいつまでも保留し、ぎりぎりまで他の求職者からの応募を待つことは得策ではありません。選考期間の長期化は、応募辞退や音信不通になるリスクを高めます。
対策例としては、オンライン面接の導入によって求職者との接触機会を早めることも有効です。また履歴書・職務経歴書の提出に関しても、企業側でフォーマットを用意したり、Webツールに切り替えたりなど工夫できるでしょう。なるべく求職者の心理的負担を減らし、気軽に応募できる仕組みを作ることで、優秀な人材との出会いに繋がりやすくなります。
オンライン面接のポイントについてはこちらもご覧ください。
まとめ|採用活動の創意工夫を繰り返しましょう
人材採用は、企業経営における重要な意思決定です。その責任の重さが、時に採用プロセスの柔軟性を失わせる場合があり、ひいては採用コストの増加につながります。
人事担当者は、競合に比べて優位性のある待遇・福利厚生の充実、そしてスピーディで丁寧な対応を心がけることで、最良の人材を獲得できる可能性が高まります。採用プロセス一つひとつに意味を持たせ、創意工夫を図ることが自社の採用力を高めることに繋がるでしょう。
企業は常に、「どんな人を採用したいか」を明確にすることが大切です。優秀な人材の定義については、こちらもご覧ください。
もし求める人物像を上手く言語化出来ない場合は、ぜひロバート・ハーフのコンサルタントまでご相談ください。貴社のビジョンやご希望をお伺いした上で、最適な人材要件をご提案いたします。
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